食欲不振の症例
※解説は分かりやすくするために、裸のイラストを使用していますが、実際の治療では患者着か衣服を着用しています。
同じ病名や症状であっても効果には個人差があります。また、このページの症例は当院の経験であり、鍼灸の一般的な効果を意味するものではありません。
食欲不振の症例
症例1 腹部の不快感
患者
40代 男性
【初診】 2017年 6月
【症状】食欲不振 食後の腹部不快感 悪心
【病歴】
20代のころから、食欲不振。食後の吐き気に悩む。食後長時間、食べ物が胃に残るような不快感がある。
病院の検査では、血液検査による数値の異常や、器質的(潰瘍・腫瘍などの)問題は見つからず、機能性ディスペプシア※と診断される。
※胃の痛み、胃もたれ、胸やけ、吐き気など症状が慢性的に続いているのに、病院で検査を行っても異常が認められない場合。機能性ディスペプシアと診断されることがあります。原因として胃酸過多・ストレスによる自律神経のアンバランスなどが考えられていますが、まだはっきりと特定はされていません。
【服用薬】ナウゼリン・アコムファド ノバミン ベリチーム デパス ドグマチールを服用。
【過去の病気】
糖尿病を薬にて治療中
所見
望診すると腹部全体が張っていることが窺える。
触診すると腹部中央とお臍の横、特に左側に何とも言えない抵抗感と痛みを感じる。
脈:沈 舌:紅 瘀血(+)
経過と治療内容
初診
お腹の緊張を緩める目的で手足の胃腸に関するツボにそれぞれ、一本の針を施した。10分後、腹部の不快感がスーと抜ける感じがしたのを目安にこの日は治療を終える。
2診
初診後、3日間は、吐き気がおさまっていた。
2診目も初診と同様に治療を行う。
3診
2診目後、頓服でいつも服用している薬をのまずに過ごせる日があった。
胃の不快感はスッキリはしないけれど、以前ほど辛くない。
20代より続く慢性的な症状のため、改善には時間がかかることを説明し、週2回の頻度で治療を提案。
治療内容は初診に準じる。
4診~8診
3診以降、薬を飲まずに過ごせる日が増えてきた。
辛い日があるが、よく話しを聞くと、決まってその前に暴食をしている様子。
鍼治療や薬の服用で、症状がおさまると、どうしても食べ過ぎてしまうと言う。
もともと、糖尿病もあるので、食べ過ぎに注意するよう伝える。
9診~15診
胃腸に自信がでてきた。
元々、夏は1年の中で最も調子が悪いが、例年よりはずっと楽とのこと。
10診以降、週2回行っていた、治療を週1回にする。
15診を終えるころには、初診当初の腹部の張りが少なくなり、上腹部に関しては、
抵抗感が半分くらいになった。
この日は、腹部の不快感などよりも吐き気が最も辛いということだったので、肘と膝にある吐き気に関する場所に処置を行う。
直後から、スーと気持ち悪さがぬけ、今までで一番効いたという。
仕事による出張のため、やむなく、2週間治療を空ける。その間セルフケアとしてできるツボを伝え、日頃から指などで刺激するように伝える。
16診 以降
2週間、治療をあけたが、膨満感、吐き気など、起きても程度は軽く、教えたセルフケアでコントロールする事ができた。
以前は、1日中胃腸の心配ばかりしていたが、日常生活の中で、症状に意識が行くことが少なくなった。
その後も隔週で治療を続けている。
使用した主なツボ
四瀆L 上巨虚L 合谷L 天井L 膝陽関L 痞根
コメント
この患者さんは、交感神経の働きを抑える薬を服用すると一時的に症状が治ることから、精神的ストレスが消化器の働きをおさえ症状を引き起こしていると見立てをたてました。
そして、見立てに従い、副交感神経を高めるよう、胃腸に関するツボに心地良い刺激を処置することにより、症状を徐々に緩解することができました。