座っているときが、いちばん痛い|3年続いた腰の痛みと、右足のしびれ・冷えがあった20代男性の鍼灸ケース
長い時間、車を運転したあと。デスクに座っているとき。じっとしているほど、腰が重く痛んでくる——。
横になって休んでいるときにも、痛みが気になる。そんな経験はありませんか?
こんにちは。はり・きゅう専門院 ゐろは鍼漢院 院長の池内です。
今回ご紹介するのは、3年前から続く腰の痛みに、右の太ももの裏のしびれと足先の冷えが加わって来院された、20代男性の方のケースです。
この記事の要約
- 3年ほど前から、じわじわと腰の痛みを自覚。長時間の運転や座っている姿勢でいちばんつらく、寝転がっているときにも痛みを感じていた20代男性のケース。
- 2ヶ月ほど前からは、右の太ももの裏にしびれ、足首から下に冷えが加わっていました。
- 整形外科でレントゲンを撮っても骨に異常はなく、痛み止めでも変化がないとのことで、ご友人の紹介で来院。鍼灸は初めてでした。
- 神経の痛みは「痛み → しびれ → 麻痺」の順に進み、戻るときはその逆をたどることが多いと言われています。この見立てにそって、まずはしびれを目的に施術を組み立てました。
- この方のケースでは、「しびれが和らぐ → 気にならなくなる → 痛む範囲が狭まる → 痛みが落ち着く」と段階的に変化していきました。※変化には個人差があります。

この記事を書いた人
池内 公(いけうち いさお)/ゐろは鍼漢院 院長。はり師・きゅう師。病院勤務で内科・整形外科・耳鼻科などの現場を経験し、臨床歴20年以上。「一本の鍼には、一人の可能性を広げる力がある」を信条に、千葉県我孫子市で日々奮闘中。
「座っているときが、いちばん痛い」
腰の痛みを感じるようになったのは、3年ほど前から。
どこかで急に痛めた、というわけではありませんでした。
少しずつ、じわじわと。気がつけば、いつも腰が痛い。そういう痛み方です。

いちばんつらいのは、長い時間、車を運転しているとき。そして、座っている姿勢のときでした。
座っている時間が長いお仕事の方です。
つらいのは、それだけではありませんでした。
横になって寝転がっているときにも、痛みを感じる。
体を休めているはずの時間にまで、痛みがついてくる状態でした。
2ヶ月前から、しびれと冷えが加わった
そして、ここ2ヶ月ほどのあいだに、新しい症状が加わっていました。
右の太ももの裏に、しびれ。
足首から下に、冷え。
これまでにも何度か、整形外科でレントゲンを撮っていただいたそうです。
結果は、骨に異常なし。
痛み止めを処方されましたが、飲んでもあまり変化がなかったといいます。
骨に異常が見つからない、と言われても、痛みは現実にそこにあります。
「何か他に、いい方法はないだろうか」
そう探しておられたところ、ご友人から当院を紹介されて来られました。鍼灸を受けるのは、初めてだそうです。
痛み・しびれ・麻痺——進む順番と、戻る順番
ここで、神経の痛みについて少しだけお話しさせてください。
神経の痛みは、その重さにあわせて 痛み → しびれ → 麻痺 の順に進んでいくと考えられています。
そして回復へ向かうときは、その逆をたどることが多いと言われています。
といっても、この3つが、きれいに分かれて出てくるわけではありません。
多くの場合は、痛みとしびれ——ときには麻痺も——が、混ざり合った状態で現れます。
その混ざり具合、つまり割合が、いまの重さの目安になります。

重くなるほど、しびれや麻痺の占める割合が増えていく。回復に向かうときは、その割合が逆へ動いていきます。
もちろん、すべての方がこの順にたどるわけではありません。それでも、体がいまどのあたりにいるのかを見るときの、大きな目安になります。
この方の場合は、3年続く腰の痛みの上に、2ヶ月前からしびれが乗っていました。
痛みだけだったところに、しびれが混じってきた。割合が、重いほうへ動いたところ。私達はそう見ました。
であれば、戻るときにも順番があるはずです。
まず、しびれ。それから、痛み。
そう考えて、はじめの目的を「しびれ」に定めました。
手がかりは、腰とお尻の境目に
しびれの出ている場所——右の太ももの裏から、体のうしろ側を通る道すじをたどっていくと、腰とお尻の境目のあたりに行き当たります。
実際に触れてみると、そこに硬いしこりのようなこわばりがありました。
場所は、仙骨(せんこつ)のきわ。
仙骨とは、腰の背骨のいちばん下につながっている、逆三角形の平たい骨です。ちょうど、ベルトの少し下あたりになります。
この硬いこわばりが、しびれのもとになっていると考えました。
初診は、鍼を1本だけ
第1診で使ったのは、上膠(じょうりょう)というツボ、右側の1本だけです。

仙骨には、左右に4つずつ、合わせて8つの小さな穴が縦に並んでいます。上膠は、そのいちばん上の穴の上にあたります。
古くから、腰やお尻の痛み、足に出る症状に用いられてきたところです。
まずは、この1本。
そして、座っているお仕事の時間が長い方でしたので、正しい座り方をお伝えして、この日は終了しました。
しびれが引くと、今度は痛みが気になる
2回目にお越しになったとき、右足のしびれは半分ほどに減っていました。
ところが、腰の痛みのほうは、それほど変わっていません。
それどころか、この方はこうおっしゃいました。
「しびれが気にならなくなった分、腰の痛みが前より気になります」
——これは、しびれの割合が減って、痛みのほうへ戻ってきたところ。
しびれが引いてきたからこそ、その手前にあった痛みが、はっきり感じられるようになった。そう受け取りました。
ですので、ここで治療の目的は変えません。
2回目も3回目も、引き続き右足のしびれを目的に、第1診と同じツボへ鍼をしていきました。
あわせて使ったのが、ふくらはぎにある承山(しょうざん)というツボです。

ふくらはぎの真ん中あたり。力を入れると、筋肉の分かれ目が「人」の字のように見える、そのくぼみにあります。
腰やお尻から、太ももの裏、ふくらはぎへと下りていく道すじの上にあり、腰や足の痛み、こむら返りなどに古くから用いられてきたツボです。
4回目——お尻のツボで、腰をゆるめる
4回目にお越しになったとき、大きな変化がありました。
右足のしびれは、ほとんど気にならないところまで。
足先の冷えも、感じなくなったといいます。
さらに、ご本人が「そういえば」と気づかれたことがありました。
歩くときに感じていた、股関節の付け根の痛み。それも、いつの間にか気にならなくなっていたそうです。
そして、腰。
初診のときには、腰からお尻にかけて、広い範囲で痛みを感じておられました。
それが、「ここ」と指でさせるくらいまで、痛む範囲が狭まっていたのです。
しびれが引き、痛む範囲が狭まった。ここでようやく、腰そのものをゆるめる番です。
使ったのは、お尻にある秩辺(ちっぺん)というツボ。

仙骨の下のほうの高さで、そこから外側へ離れた、お尻のふくらみのあたりにあります。
坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)のような、腰からお尻、足にかけての痛みに古くから用いられてきたツボです。
「そういえば、よく眠れるようになった」
4回目のあと、腰の痛みは「忘れているくらい楽」というところまで和らぎました。
ただ、3日ほど経つと、また少しずつ痛みが出てきます。
ここは焦らず、同じ施術を続けました。5回目、6回目、7回目。
そして8回目。最後の施術のあとは、腰の痛みを感じずに過ごせるようになりました。
通っていただいたのは、週に2〜3回のペースで、合計8回です。

経過の途中で、この方がふと口にされた言葉があります。
「そういえば最近、よく眠れるようになった」
初診でうかがっていた症状のなかに、眠りの浅さがありました。
腰の痛みとしびれのことで頭がいっぱいで、ご本人も忘れていたようなことです。
この方のケースでは、痛みやしびれと一緒に、眠りのほうも動いていきました。
その後は、以前から時々あった右の肩甲骨まわりの引きつるような痛みを目的に、通っていただいています。
この症例をふりかえって
神経の痛みは 痛み → しびれ → 麻痺 と進み、戻るときはその逆をたどることが多いと言われています。
この方のケースでは、「しびれが和らぐ → 気にならなくなる → 痛む範囲が狭まる → 痛みが落ち着く」という順に変化していきました。
問診と検査で、もとになっていると考えられる場所を絞り込むこと。そして、いま何を目的に施術するのかを、はっきりさせること。
それが、この段階的な変化につながったのだと考えています。
2回目に「痛みが前より気になります」と言われたとき、腰の痛みのほうへ目的を移してしまっていたら、この経過にはならなかったかもしれません。
※症状の変化には個人差があります。
なお、腰の痛みや足のしびれの影に、治療が必要な状態が隠れていることもあります。強いしびれが続くときや、足に力が入らない状態が長く続くときは、まずは整形外科を受診してください。
こんな方はご相談ください
- 3年、5年と、腰の痛みと長くつきあっている
- 長時間の運転や、デスクに座っている姿勢で腰が痛くなる
- 横になって休んでいるときにも、腰が痛む
- お尻から太ももの裏にかけて、しびれを感じる
- 足首から下が、いつも冷たい気がする
- レントゲンで骨に異常はないと言われたが、痛みは続いている
- 痛み止めを飲んでも、あまり変化がない
上記のような症状でお悩みの方は、ひとりで抱え込まずに、一度ご相談ください。
ご予約はこちら
当院は完全予約制です。
ご予約・お問い合わせは、下の3つのいずれかから、お気軽にどうぞ。
受付時間:平日 9:00〜19:00/土曜 9:00〜17:00(日・祝休み)
※キャンセルは、予約日の2日前までにご連絡ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。






