我孫子市・柏市のはりきゅう専門院

1kmを過ぎると痛みだすアキレス腱…2ヶ月後の大会をあきらめかけた50代女性の鍼灸ケース

" 症例 "

2026年7月27日

走りはじめは、なんともない。でも、1kmを過ぎたあたりから、じわじわとアキレス腱が痛みだす……。

そして翌朝、ベッドから下りて床に足をついた、その一歩目が痛い。そんな経験はありませんか?

こんにちは。はり・きゅう専門院 ゐろは鍼漢院 院長の池内です。

今回ご紹介するのは、2ヶ月後にマラソン大会をひかえながら、アキレス腱の痛みで走ることを控えていた、50代女性の方のケースです。

この記事の要約

  • 1ヶ月ほど前から、走ると1kmあたりでアキレス腱が痛みだし、朝の第一歩もつらくなっていた50代女性のケース。
  • はじめは左足だけだった痛みが右足にも出て、ランニングを控えるように。2ヶ月後にはマラソン大会をひかえていました。
  • 足のむくみ、尿の量が少ない、夜間に1回起きる——といった体のサインから、東洋医学でいう「腎(じん)」と「膀胱(ぼうこう)」のめぐりに目を向けました。
  • 使ったのは、腰の「腎兪(じんゆ)」と膝裏の「委中(いちゅう)」。痛むアキレス腱そのものには鍼を打っていません。
  • この方のケースでは、週2回・計3回(約2週間)で痛みが気にならなくなり、ジョギングを再開されました。※変化には個人差があります。

ゐろは鍼漢院 院長 池内公(問診の様子)

この記事を書いた人
池内 公(いけうち いさお)/ゐろは鍼漢院 院長。はり師・きゅう師。病院勤務で内科・整形外科・耳鼻科などの現場を経験し、臨床歴20年以上。「一本の鍼には、一人の可能性を広げる力がある」を信条に、千葉県我孫子市で日々奮闘中。

走り出して1kmで、痛みが出てくる

この方が最初に気づかれたのは、1ヶ月ほど前のことでした。

ランニングの最中に、アキレス腱のあたりが、少しずつ痛むようになってきたのです。

走りはじめは、まったく気にならない。ところが1kmくらい走ったころから、じわじわと痛みを感じてくる——そんな出方でした。

そしてもうひとつ、つらかったのが、寝起きの第一歩です。

朝、ベッドから起き上がって床に足をついた瞬間、かかとの痛みに顔をしかめる女性

朝、ベッドから下りて床に足をついた瞬間に、ズキッとくる。

さらに、はじめは左足だけに感じていた痛みが、しばらくすると右足にも出てくるようになりました。

これはまずい、と思われたのでしょう。この方は、大好きなランニングを控えるようになります。

けれど、2ヶ月後にはマラソン大会の出場が決まっていました。

「一日でも早く、トレーニングを再開したいんです」——それが、来院されたときのお話でした。

足以外に出ていた、体のサイン

お話をうかがい、体を診させていただくと、足元以外のところにも、いくつか気になるサインがありました。

食欲はあり、睡眠もよくとれている。そこは問題ありません。

一方で、便秘の傾向があり、おしっこの量は少なめ。夜中に1回、トイレで目が覚めるとのことでした。

そして、下肢(かし=足)がむくみやすい。肌の色は浅黒く、乾いた感じがありました。

脈は渋脈(じゅうみゃく)。指の下をなめらかに流れず、渋るような打ち方をしていました。

そして舌の色は、暗い紫色をしていました。

舌の色くらべ。左が健やかなときの淡いピンク色、右が瘀血のサインとされる暗い紫色

左が健やかなときの舌の色。右が、この方のような暗い紫色の舌です。

渋脈と、この暗い紫色の舌。どちらも東洋医学では、瘀血(おけつ)——血のめぐりが滞っているサインとされています。

アキレス腱の痛みだけを見ていると、見落としてしまいそうな情報ばかりです。けれど東洋医学では、こうした「体、全体の様子」を、痛みと同じくらい大切な手がかりとして扱います。

かかととアキレス腱を通る「道」

ここで、東洋医学的な見方を少しだけお話しさせてください。

東洋医学には経絡(けいらく)という考え方があります。体の中を、気血(きけつ=エネルギーと血)がめぐる道すじのことです。

その道のひとつに、足の太陽膀胱経(あしのたいようぼうこうけい)という、体のうしろ側を縦に走る長い道があります。

足の太陽膀胱経の走行。背中から腰、お尻、太ももの裏、膝の裏、ふくらはぎ、アキレス腱を通ってかかとへ下りていく道すじ

この道は、腰からお尻、太ももの裏、膝の裏を通り、ふくらはぎからアキレス腱、かかとへと下りていきます。

つまり、この方が痛みを訴えているアキレス腱は、この道の下流にあたる場所なのです。

そこで、この道すじに沿って腰から順に調べていくと、腰椎(ようつい)の5番と仙椎(せんつい)のあいだが狭く、動きが悪くなっていました。

腰椎5番と仙椎のあいだ(赤い印)。腰の背骨のいちばん下と、骨盤の中央にある骨との継ぎ目

腰の背骨のいちばん下と、骨盤の中央にある骨との継ぎ目——ちょうど、ベルトの少し下あたりです。

田んぼの用水路を思い浮かべてみてください。

上流の水路に土や枝が詰まっていると、いくら下流の田んぼを見張っていても、水は届きません。

手を入れるべきは、詰まっている上流のほうです。

また、足のむくみ、尿の量の少なさ、夜間のトイレ——これらは東洋医学でいう腎(じん)の力が足りていないときに、よくみられるサインです。

東洋医学の「腎」は、腎臓そのものというより、体の水はけや、骨・腰まわりを支える力を含んだ、もう少し広い働きを指します。

そして腎と膀胱は、表裏(ひょうり)の関係にあるとされています。

腎と膀胱は「表」と「裏」

この「表裏」という考え方が、今回の施術の土台になりました。

東洋医学では、体の中の働きを臓(ぞう)腑(ふ)の2つに分けて考えます。

は、体の奥で大切なものをつくり、たくわえておく側。

は、受け取ったものを通し、運び、外へ出していく側です。

そして、この臓と腑が2つで1組になって支え合っている——これが表裏の関係です。

臓(ぞう)=たくわえる側腑(ふ)=通して出す側
肝(かん)胆(たん)
心(しん)小腸(しょうちょう)
脾(ひ)胃(い)
肺(はい)大腸(だいちょう)
腎(じん)膀胱(ぼうこう)

※代表的な組み合わせです。

……と言われても、ピンとこないかもしれませんね。レストランを思い浮かべてみてください。

レストランの厨房とホール。奥の厨房で料理をつくり、表のホールで運ぶ

奥の厨房では、料理人が材料をたくわえ、仕込みをして、料理をつくっています。

表のホールでは、店員がその料理を運び、お皿を下げ、店を回しています。

もし厨房の仕込みが滞れば、ホールは出す料理がなくなり、回らなくなります。

反対に、ホールが混み合ってお皿が下がってこなければ、厨房の手も止まってしまう。

奥(裏)と表は、切り離せません。片方が弱れば、もう片方にも影響が出ます。

腎と膀胱も、これと同じ間柄だと考えられてきました。

腎と膀胱の位置。腰のあたりに左右ひとつずつの腎と、下腹部の膀胱が管でつながっている

は、腰のあたりに左右ひとつずつ。体の水はけを整え、腰や骨を支える、奥の「厨房」役です。

膀胱は、下腹部にあって、いらなくなった水をためて外へ出す、表の「ホール」役。

そして、この2つは経絡——さきほどの「道」——としても、足元でつながっています。

この方の、足のむくみ、尿の量の少なさ、夜間のトイレ。どれも、奥の厨房にあたるが疲れているサインでした。

厨房が疲れれば、表のホールにあたる膀胱の道すじも、気血がめぐりにくくなる。

そのしわ寄せが、道すじのいちばん下流にあたるアキレス腱に出てきても、不思議ではない——そう考えて、施術を組み立てました。

腰の「腎兪」と、膝裏の「委中」

この方に使ったのは、腰と膝の裏にある、2つのツボです。

腎兪(じんゆ)の位置。腰のいちばんくびれた高さで、背骨から指2本ぶん外側

ひとつめは、腎兪(じんゆ)

腰のいちばんくびれるあたりの高さで、背骨の中心から左右に指2本ぶんほど外側にあります。

その名のとおり「腎の気が出入りするところ」とされ、古くから腰の重だるさ、体のむくみ、おしっこにまつわる不調に用いられてきたツボです。

委中(いちゅう)の位置。膝の裏側にできる横じわの、ちょうど真ん中

もうひとつは、委中(いちゅう)

膝の裏側、膝を曲げるとできる横じわの、ちょうど真ん中にあります。

鍼灸の世界には古くから「腰背(ようはい)は委中に求む」という言い伝えがあります。腰や背中のことで困ったら、膝の裏の委中を使いなさい、という意味です。

腰から遠く離れた膝の裏のツボが、腰の不調に選ばれる。不思議に思われるかもしれませんが、これも同じ「道」でつながっているからこそ、です。

どちらも、鍼灸師なら誰でも知っている、いわば定番中の定番のツボです。

ですがそれは、それだけ長いあいだ、くり返し使われ、頼りにされてきたということでもあります。珍しいツボほど必殺技のように効く、ということはありません。定番のツボこそ、高い効果が期待できるとも言えるのです。

この日、痛みが出ているアキレス腱そのものには、鍼を打っていません。

その後の経過

その日の晩、この方は「膝から下が、ポカポカと暖かくなった」とおっしゃっていました。

そして翌朝。起きて床に足をついたときの、あのズキッとくる痛みが、和らいでいたそうです。

さらに、初回の施術のあとから、夜中にトイレで目が覚めることがなくなったそうです。

2回目のあとには、こんなお話もありました。

「お小水も、お通じもよくなりました。久しぶりに、いい形の便がスッと出ました」

そして3回目。足のむくみが減って、「足全体が軽い」とおっしゃっていました。

この方のケースでは、痛む場所とは関係のなさそうな、おしっこやお通じ、むくみまで、一緒に動いていきました。

さきほどの「表と裏」が、そのまま経過にあらわれた形でした。

同じ施術を、週2回のペースで、合計3回。期間にすると、2週間ほどでした。

そのころには、左右のアキレス腱の痛みが、どちらも気にならなくなり、ジョギングを再開できるまでになりました。

痛みが和らぎ、朝の川沿いをふたたび走れるようになった女性

そして2ヶ月後、目標にされていたマラソン大会にも、無事に出場されました。

ご本人いわく、今回は「復帰が目標」。まだ本調子ではなかったそうです。

「次はコンディションを整えて、もっといい走りができるように頑張りたい」——そう張り切っておられました。

かかとやアキレス腱の症状は、東洋医学でいう「腎」と「膀胱」のめぐりという視点から組み立てると、変化がみられることが少なくありません。私達は日々の臨床から、そのように感じています。

※症状の変化には個人差があります。

また、アキレス腱の痛みの影に、腱の炎症や損傷など、治療が必要な状態が隠れていることもあります。痛みだけではなく、強い腫れや、力が入らない状態が長く続くときは、まずは整形外科を受診してください。

こんな方はご相談ください

  • 走り出してしばらくすると、アキレス腱やかかとが痛みだす
  • 朝、起きて床に足をついた第一歩がつらい
  • 片足だけだった痛みが、もう片方にも出てきた
  • 痛みが気になって、ランニングやウォーキングを控えている
  • 足がむくみやすい・夜中にトイレで目が覚めることがある
  • 大会や目標があり、一日でも早くトレーニングに戻りたい

上記のような症状でお悩みの方は、ひとりで抱え込まずに、一度ご相談ください。

ご予約はこちら

当院は完全予約制です。
ご予約・お問い合わせは、下の3つのいずれかから、お気軽にどうぞ。

受付時間:平日 9:00〜19:00/土曜 9:00〜17:00(日・祝休み)
※キャンセルは、予約日の2日前までにご連絡ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

カテゴリー: 症例.
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