下剤を飲むと今度は下痢…便秘でお悩みだった40代女性のケース
気がつけば、もう1週間もお通じが来ていない。お腹は張って、なんだか吐き気までしてくる……。
そんな「出したいのに、出ない」つらさを、ひとりで抱えていませんか。
こんにちは。はり・きゅう専門院 ゐろは鍼漢院 院長の池内です。
今回ご紹介するのは、1年ほど前から便秘に悩まれていた、40代女性の方のケースです。
この記事の要約
- 1年ほど前から便秘に悩まれていた40代女性のケース。1週間以上お通じが来ず、鍼灸治療をする前は、吐き気が出ることも。
- 内科では習慣性便秘と言われ下剤を処方されましたが、今度は下痢がつらく、お仕事にも支障が出て困っている状況でした。
- お腹を診ると、おへその辺りから腰まで、ぐるっと帯を巻いたように冷たく張っている状態でした。
- 江戸時代の鍼の古典『鍼道発秘』を手がかりに、気海・大腸兪・承山などのツボで、お腹まわりの冷えと張りをゆるめることを目的に施術しました。
- 通院を重ねるにつれてお通じのリズムが整い、肩こりや霜焼けも楽になっていきました。※変化には個人差があります。
この記事を書いた人

池内 公(いけうち いさお)/ゐろは鍼漢院 院長。はり師・きゅう師。病院勤務で内科・整形外科・耳鼻科などの現場を経験し、臨床歴20年以上。「一本の鍼には、一人の可能性を広げる力がある」を信条に、千葉県我孫子市で日々奮闘中。
下剤を飲むと、今度は下痢がつらい
この方が便秘に悩まれるようになったのは、1年ほど前からでした。
生理が始まる1日前だけは、なぜか下痢をする。けれど、それ以外の日はずっと便秘が続く——という状態でした。
お通じのない日が重なってくると、次第に手足がむくみ、肩こりもひどくなっていきます。
ひどいときは1週間以上もお通じが来ず、そうなると吐き気まで催すこともあったそうです。
内科を受診したところ、「習慣性便秘」と言われ、下剤(センナ)を処方されました。
ところが、今度はその薬を飲むと下痢がひどく、お仕事にも差しさわりが出てしまう。
「これでは、どちらにしても落ち着かない」——そんなときに、ご友人から鍼灸をすすめられ、当院へ来られました。
おへその高さから腰まで、冷たい帯を巻いたように

まず、お腹の状態をみせていただきました。
すると、おへその高さから腰にかけて、ちょうど帯を巻いたように、ぐるりと冷たく張っているのが感じられました。
ご本人も、ふだんから冬場は霜焼けに毎年悩まれていて、便秘がひどくなると、その痛痒さも増す、とのことでした。
体の内側の冷えと、便秘。この2つは、別々のことのように見えて、実は深くつながっているように思われました。
お腹の冷えと、便秘の関係
ここで、今回の便秘を当院では、どう考えたのか、少しだけお話しさせてください。
私たちの腸は、便が直腸まで届くと「さあ、出しましょう」という信号を出して、ぎゅっと動きます。この一連の流れを、排便反射(はいべんはんしゃ)といいます。
このリズムがうまく働いてこそ、するりと自然なお通じがきます。
では、そのお腹まわりが、冷えて硬くこわばっていたら、どうでしょう。
冷蔵庫から出したばかりのゴムが、硬くてしなやかに曲がってくれないように、冷えた腸もまた、動きたがらなくなってしまう——。
そう考えると、この方の「冷たい帯」のような張りが、本来のリズムにブレーキをかけているのではないか。
だとすれば、腸そのものを無理に動かすよりも、お腹まわりの冷えと張りをゆるめてあげることが、自然なリズムを取り戻す助けになるのではないか。私達は、そんな見立てで施術にあたりました。
便秘に、昔から使われてきた代表的なツボ
ここで少し、便秘のときに鍼灸でよく使われるツボを、ご紹介させてください。
天枢(てんすう)は、おへその左右、指3本分ほど外側にあります。ちょうど大腸のすぐ近くにあたり、便秘のときに最もよく使われる代表的なツボとして知られています。

足三里(あしさんり)は、膝のお皿の少し下、すねの外側にあるツボです。胃腸の働きを高め、腸が便を押し送る動き——蠕動(ぜんどう)運動——をうながすとされ、昔から「万能のツボ」として親しまれてきました。

合谷(ごうこく)は、手の甲の、親指と人差し指のつけ根にあります。大腸とのつながりが深く、大腸の働きを活発にするといわれるツボです。

「有名すぎて、かえって効かないのでは?」と思われるかもしれません。
けれど、それだけ長い年月くり返し使われ、頼りにされてきたからこそ、名前が残っているツボたちです。珍しいツボほどよく効く、というわけではないのですね。
今回のよりどころ——江戸時代の鍼の古典『鍼道発秘』
実は今回の施術は、私の思いつきではありません。江戸時代の後期に書かれた『鍼道発秘(しんどうはっぴ)』という鍼の古典を手がかりにしています。
この本を著したのは、葦原検校(あしはらけんぎょう)という鍼のお医者さんです。
7歳のときに麻疹(はしか)で目が見えなくなりながら、鍼の道を志した人でした。
やがてその腕が認められ、あの戦国の真田家の子孫が治めた信州・松代藩(まつしろはん)のお殿様。真田幸弘(さなだゆきひろ)に仕えます。
さらにのちには、徳川将軍家の御殿医(ごてんい)つまり、主治医に取り立てられるほどの名医になったと言われています。
その葦原検校が残した『鍼道発秘』という医学書に、便秘について、こんな一節があります。原文のまま、ご紹介します。
もし元気衰え大便久しくなれば気海を取るべし。また徹腹を深く刺して留めるに妙あり。大便結せば大腸の兪並びに承山を刺して効あり。
今からおよそ200年前の書物に、便秘にはこのツボ、とはっきり記されているのですね。
ここに出てくるツボを、少しかみくだいてご説明します。
- 気海(きかい)……おへその下、指2本分ほどのところ。お腹の元気の”みなもと”とされるツボで、ここを温めるように施術しました。(条文の「徹腹(てっぷく)」は、お腹を深くまで狙って鍼をとどめる、という意味あいです)
- 大腸兪(だいちょうゆ)……腰、骨盤の高さで背骨の外側にあります。名前のとおり大腸に関わりの深いツボで、この方はここがいちばん硬く、こわばって反応していました。
- 承山(しょうざん)……ふくらはぎの中央、アキレス腱を上へたどって、筋肉が「人」の字に分かれるあたり。古くから、お通じやお腹の不調に用いられてきたツボです。



「つらいのはお腹なのに、どうして腰やふくらはぎ?」と思われるかもしれませんね。
けれど、つらい場所そのものではなく、そこと道でつながった離れたツボを使う——これは東洋医学ではめずらしいことではないのです。
初回は、お腹の気海のあたりを温めながら、腰の大腸兪と、ふくらはぎの承山に鍼を行いました。
すると施術のあと、ご帰宅されてから、4日ぶりにお通じがあったそうです。
冷たい帯が、だんだん小さくなっていく
とはいえ、初回はその日に出たものの、翌日からはまた便が出にくい状態に戻ってしまいました。
そこで2回目からも、お腹の気海のあたりを温め、腸の動きをうながす目的で、ふくらはぎの承山などに、やや強めの鍼を続けていきました。
同じ施術を5回目まで重ねていくと、おへそから腰までを覆っていた冷えの範囲が、少しずつ小さくなっていくのが確認できました。
それに合わせて、お通じにも変化がありました。
3回目までは、施術した当日か翌日しか便意がありませんでしたが、4回目のあとからは、週に2〜3回、お通じがくるようになっていったのです。
お通じのリズムが整うにつれて、悩まされていた肩こりや霜焼けも、だんだんと楽になっていきました。
自宅でのお灸で、リズムを保つ

8回目のころには、「毎日ではないけれど、以前のような便秘のつらさはまったくない」とおっしゃるまでになりました。
10回目の施術のあと、ご自宅でできるお灸のやり方をお伝えして、週1回の定期的な通院はいったん卒業となりました。
現在は、お疲れやストレスがたまると少し便秘気味になることもあるため、月に1回、コンディションを整える目的で通われています。
※お通じの変化には個人差があります。また、便秘の陰に治療が必要な病気が隠れていることもありますので、急に便通が変わった・血が混じる・強い腹痛が続くといったときは、内科など医療機関へのご相談も大切にしてください。
こんな方はご相談ください
- 何日もお通じが来ず、お腹の張りがつらい
- 下剤を使うと、今度は下痢がつらくて落ち着かない
- 便秘が続くと、むくみや肩こり、吐き気まで出てくる
- お腹や腰まわりの冷えが、ずっと気になっている
- 薬にできるだけ頼らず、自然なお通じを取り戻したい
上記のような症状でお悩みの方は、ひとりで抱え込まずに、一度ご相談ください。
ご予約はこちら
当院は完全予約制です。
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受付時間:平日 9:00〜19:00/土曜 9:00〜17:00(日・祝休み)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。






