我孫子市・柏市のはりきゅう専門院

東洋医学をもっとカジュアルに(第2回)「怖くて腰が抜ける」——心と体は、ひとつ

" 東洋医学をかもっとカジュアルに "

2026年7月13日

ゾッとするような、怖い思いをしたとき。

腰から、すっと力が抜けたことはありませんか。

こんにちは。はり・きゅう専門院 ゐろは鍼漢院、院長の池内です。

前回は、「東洋医学って、実はもう身近にあるんですよ」というお話をしました。

今回はもう一歩ふみこんで、東洋医学のいちばん大事な考え方をご紹介します。

それは——体を、バラバラに分けて考えない、という見方です。

東洋医学では、これを「整体観念(せいたいかんねん)」と呼びます。

むずかしい言葉ですが、中身はシンプル。「いちいち切り離さない」、それだけです。

そして、切り離さないものが、大きく3つあります。

①体の中どうし ②心と体 ③体と自然

「怖くて腰が抜ける」「悩みが続いて胃が痛い」——だれもが心当たりのあるこの感覚が、その入り口になります。どうぞ気楽に読んでくださいね。

この記事の要約
  • 東洋医学は、体をバラバラに切り離さず、「ぜんぶつながっている」ととらえます(整体観念)。
  • ①体の中どうし(肝と筋、腎と骨…)②心と体 ③体と自然(季節)。をそれぞれ切り離さず、一つとして捉える考え方について解説します。
この記事を書いた人

ゐろは鍼漢院 院長 池内公

はり・きゅう専門院 ゐろは鍼漢院 院長 池内 公(いけうち いさお)。

臨床歴20年以上。病院勤務で内科・整形外科・耳鼻科などの現場を経験。

2012年からは獣医師向けに東洋医学の講義も担当しています。千葉県我孫子市、手賀沼のほとりで開院。

東洋医学は「分けて考えない」

西洋医学は、体を細かく分けて発展してきました。

内科、整形外科、耳鼻科……というふうに、部位や臓器ごとに深く掘り下げていく。

これはとても大切な考え方で、そのおかげで進んだ医療がたくさんあります。

いっぽう東洋医学は、逆の見方をします。

体を、ひとつのつながったものとして、まるごと見る。これが「整体観念」です。

さきほどの3つ——①体の中どうし、②心と体、③体と自然——を、ひとつずつ、身近な例で見ていきましょう。

① 体は、バラバラのパーツじゃない

東洋医学は、体のはたらきを大きく5つに分けて考えます。

肝(かん)・心(しん)・脾(ひ)・肺(はい)・腎(じん)の5つ。これを「五臓(ごぞう)」と呼びます。

ここで大事なのは——この5つは、それぞれ体のいろんな場所と、糸でつながっている、ということ。

たとえば、こんなふうにです。

  • は、筋(すじ・腱)とつながっています。→ 目が疲れる、まぶたがピクピクする、筋がつる…といった不調は、肝から見たりします。
  • は、とつながっています。→ 腰や骨の弱り、耳鳴りなどは、腎から見たりします。
  • は、皮膚とつながっています。→ 肌の乾燥、鼻の不調は、肺から見たりします。

この「どの臓が、体のどこ・どんな感情・どの季節・どの味とつながっているか」を、一覧の表にしたものがあります。

それが五行色体表(ごぎょうしきたいひょう)です。少しだけ、のぞいてみましょう。

五臓 体の部分 感情 季節
肝(かん) 筋・目 怒り 酸っぱい
心(しん) 血管・舌 喜び 苦い
脾(ひ) 肉・口 思い悩み 梅雨 甘い
肺(はい) 皮膚・鼻 悲しみ 辛い
腎(じん) 骨・耳 恐れ 塩からい

はじめは、覚えなくて大丈夫です。「へえ、こんなふうにつながっているんだ」と眺めるだけで十分。

そして、おもしろいのはここから。5つの臓は、たがいにも関わり合っています。

たとえば、目の不調で来られた方がいたとします。

表を見ると、目とつながりが深いのは「肝」。まずはそこを整えます。

でも、それだけでは良くならないこともあります。

よくよくうかがうと、耳鳴りもある……となれば、「腎」も関わっているのかもしれない。

鼻や呼吸器の不調もある……となれば、「肺」も関わっているのかもしれない。

こんなふうに、こじれている不調ほど、離れた場所どうしがつながっていることが多いのです。

だから東洋医学は、「目だけ」「腰だけ」と切り離さず、体ぜんぶのつながりの中から、糸口をさがしていきます。

②「怖い」と腰が抜ける——心と体はひとつ

2つめは、心と体のつながりです。

さきほどの表に、「感情」の列がありましたね。東洋医学では、感情もまた、五臓と結びついていると考えます。

たとえば「恐れ」。これは「腎」とつながっています。

そして腎は、腰や骨と関係が深い場所。だから、強い恐れを感じると、その影響が腰にあらわれる——。

「怖くて腰が抜ける」というあの感覚を、東洋医学はこんなふうにとらえるんですね。

つぎに「思い悩む」気持ち。これは「脾(ひ)」——消化のはたらきとつながっています。

考えごとが頭のなかをぐるぐる巡って、止まらない。そんな日が続くと、食欲が落ちたり、胃が重くなったりしますよね。

「ストレスで胃が痛い」というのは、まさにこのつながりです。

座って、おなかに手を当てる人。頭の上にもやもやとした考えが漂い、体へつながっていくイメージ

もうひとつ、「怒り」。これは「肝」とつながり、筋(すじ)のこわばりとしてあらわれます。

イライラすると、肩に力が入って、体がこわばる。歯を食いしばる。——思い当たること、ありませんか。

心と体は、別々のものではなく、ひとつにつながっている。昔の人は、そう見ていました。

③ 春になると、そわそわする——体と自然

3つめは、体と自然(季節)のつながりです。

私たちの体は、その日の天気や季節から、思っている以上に影響を受けています。

たとえば春。なんだか気持ちがそわそわして、落ち着かない。そんな経験はありませんか。

表をもう一度見てみましょう。春は「肝」の季節です。

春は風が強く吹く季節でもあり、東洋医学では、その「風」を受けて「肝」が高ぶりやすいと考えます。

春の花粉症で目がかゆくなるのも、東洋医学では「風」と「肝」のつながりから見たりします(表のとおり、肝は目とも結びついていましたね)。

そして、味覚にもあらわれます。

たとえば、妊娠中に酸っぱいものが無性に欲しくなる方がいます。

表を見ると、酸っぱい味は「肝」の列。酸味は、肝を助ける味なのです。

東洋医学では、妊娠中は、おなかの赤ちゃんを育てるために肝がはたらきづめで、疲れやすいと考えます。

だから、その肝を助けようとして、体が自然と酸っぱいものを欲しがる——そんなふうに見るわけです。

体は、季節とも、食べたいものとも、ちゃんとつながっているんですね。

桜の下で春風に吹かれる人。手前に青い酸っぱい実の入った器

つながりで見ると、手あてのヒントになる

こうして「体の中も、心も、季節も、ぜんぶつながっている」という目で見ると、見えてくることがあります。

たとえば、腰の痛み。そのつらさが、どんなときに強くなるか——。

怖い思いや不安が続いたあとなのか、考えごとで眠れない時期なのか、季節の変わり目なのか。

そこに糸口があると、東洋医学では考えます。

だから私たちは、つらい場所そのものだけでなく、心の状態やその季節も、そっとうかがいながら手あてを組み立てていきます。

もちろん、すべてがこの表のとおりとはかぎりません。

それでも「体はつながっている」という見方は、日々の臨床でとても助けになってくれる——私たちは、そう感じています。

難しく考えなくて、大丈夫

東洋医学の「分けて考えない」という見方、なんとなく伝わったでしょうか。

体の中どうし。心と体。体と季節。それらはひとつに、ゆるやかにつながっている。

そう思って自分の体をながめると、不調のサインが少し読み取りやすくなるかもしれません。

次回(第3回)は、東洋医学ならではの、ちょっと不思議なお話です。

「同じ病名でも、人によって手あてが変わる」。その秘密である「証(しょう)」という考え方を、やさしくほどいていきます。どうぞ、お楽しみに。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

カテゴリー: 東洋医学をかもっとカジュアルに.
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